ひとりたほいや/にこぽん

ひとりたほいや

★問題★「にこぽん」とは?

  1. 【Nikopon】ベンツェドリンの商標名。覚醒剤の一種。連用によって中毒。
  2. にこにこして相手の肩をぽんと叩き、親しそうにうちとけて人を懐柔する態度。
  3. 川にこぽんと落ちた少年を助けたことで知られる僧侶の名。→『往生要集』
  4. 【尼子凸】台湾・中国南部に産するミカンの一品種。原産地はインド。
  5. 【Nikpon】カメラ製造メーカー名。1973年、ニコン(Nikon)に改称。
  6. 【和本】明和〜天明の頃を中心に主に京都で発達した小説の一様式。
  7. 生理用品。肛門と膣の両方に同時挿入が可能。
  8. 二者択一を迫られること。
  9. 尻が割れていること。
  10. 睾丸。たまぽこ。
  11. 二卵性双生児。
  12. 日光狸軍団。

 ひとつだけが、本当に広辞苑に載っています。さて、どれでしょう?

 

正解はこの下!

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【解答コラム】命をかけて守るべきものとは

 仕事が忙しくて座ってばかりいたら、右の尻にオデキができてしまった。  痛いからといって立って仕事をすると疲れる。しょうがないので、左の尻に体重をかけて座っていると今度は左の尻にオデキができてしまった。  だが、その頃には右の尻のオデキは直っている。今度は右で座る。右の尻にオデキができる。左で座る。左の尻に……。  まったく、人間の体というものはうまくできているもんだ。パーツが2つあるおかげで助かっていることは数知れない。

玉が潰れるとき

 お笑いコンビ「爆笑問題」の田中が睾丸を摘出した。だが、取ったのは片方だけなので、命はもちろん生殖機能にも何ら問題はない。これなども、2つあって助かった例だろう。  睾丸がなくても生きていけるし、望んで切除する人もいる。今ではそう分かっているものの、小学生時代の私は 「玉ガ片方デモ潰レタラソノトキハ死ヌノダ」 と思いこんでいた。

金玉の危うさ

 「これがなければ生きていけない」という体の部品といえば、心臓や脳もそうだ。しかし、脳は固い頭蓋骨で覆われているし、心臓も体の中心の容易には触れない場所にある。  それに対し、睾丸は引っ張るとよく伸びる薄い皮に包まれているだけの上に、触ろうと思えば誰にも触れてしまう。さらに、ちょっと強く握れば潰れてしまう柔らかさときたら、頼りないことこの上ない。まるで、蛭子能収が指揮をとる部隊に配属された兵隊のような気分である。  親に「玉が片方でも潰れたら死ぬ」と聞かされた小学生の私は、恐怖のどん底にたたき落とされた。

金玉ノイローゼ

 親としては「少しオーバーに教えておけばその分大事にするだろう」と思ったのだろう。だが、まさか息子がノイローゼのような状態になるとは予想していなかったに違いない。  それから私は野球をまったくやらなくなった。ボールが当たって潰れてしまっては困るからだ。犬に近寄らなくなった。噛みちぎられては困るからだ。寝なくなった。寝返りをうったときに体の下敷きになって潰れては困るからだ。  私の意識は常に睾丸に集中していた。 「なければ生きていけない」「一番守るべき存在」  それこそが睾丸だったのだ。

助けるか否か

 話は変わるが、先日テレビで「川でおぼれている子供を助ける」シーンを見 た。  ドラマではよくある光景だが、現実となるとなかなかできるものではない。  穏やかな川ならばともかく、激流で渦巻く川だったらどうだろう。そんなところに入ったら、十中八九自分も死んでしまう。だが、助けに行かないことにはおぼれている子供は100%死んでしまう……。  こんな状況に陥ったら、あなたは一体どういう行動をとるだろうか。

 私はといえば、仮におぼれているのが「最愛の恋人」だとしたら、迷わず飛 び込むだろう。睾丸の話と同じで「なければ生きていけない」からだ。 「親兄弟」「子供」「友人」でも同じ。「滅多に会わない友人」の場合も飛び込むだろう。そこで飛び込まなければ後悔の念にさいなまれて、気の弱い私は死んでしまうからだ。そうしなければ生きていけない。生きるためには飛び込むしかないのだ。  問題となるのが「見知らぬ人」の場合だ。飛び込まなければ死ぬほど後悔するかもしれないが、しないかもしれない。これはその時にならないと判断できない。おぼれているのが子供だったら飛び込む可能性は高いが、森首相やデビ夫人、いしかわじゅんがおぼれていてもおそらく飛び込まないだろう。

真実を知った日

 話は戻る。ノイローゼ状態になった私を見かねた母親は、数日後には真実を話してくれた。  これにて一件落着。もう、始終死の恐怖におびえて暮らすこともないのだ。この時私が味わった開放感は、受験生活終了時の86倍、6日間風呂に入ることもできずにやっていた仕事がやっと一段落した昨日の132倍だった。

パラダイムシフト

 だがその一方で、あまりの大きなシフトについていけない私もいた。  何しろ「1つでも欠けたら生きていけない」と思いこんでいたものが、実は「片方なくても大丈夫。なんなら両方なくてもいい」という存在だったのだ。 「命をかけて守るべき最愛の恋人」が実は一卵性双生児だったことが発覚、「クローンもいるから大丈夫よ」と言われたようなものだ。これではとても愛することなどできない。

医師の笑顔

 そんなわけで、それ以来私の睾丸も愛情を注がれることなく、無頓着に扱われながら年月を過ごした。それでもなんとか2個とも無事に残っている。  しかし、尻のオデキはついに左右とも直らなくなってしまった。仕事に差し支えるのでしかたなく病院へ行って来た。「尻を見せるのイヤだなぁ」などと思いつつドキドキしていたのだが、にこにこと笑顔で現れた先生と世間話をしているうちにいつの間にか自然とパンツを脱いでいた。やはり笑顔の人には気を許せるものだ。さすがはプロのテクニックである。

 ……というわけで正解は2番。「明治後期の首相桂太郎の政党懐柔策に対する標語に始まる」そうです。当たりましたか?

(玉生洋一)


評価

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初出

「コラ村」第27号(2000年10月4日号)

ひとりたほいや

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