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カウントダウン・ラブ 1999-2000

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カウントダウン・ラブ 1999-2000   玉生洋一

 その悲劇まであとカウント5。
 1曲歌い終わった後の歌手「ヘーイ! みんな、今日は来てくれてありがとう! 僕と一緒に時代の変わる瞬間を迎えよう!!」
 超満員の客席からはもちろん大歓声が……なぜかあがらない。拍手もまばらである。

 カウント4。
 歌手、少しも動じずに「なんだ、ノリが悪いなあ。そうか。みんな、あのことを気にしてるんだな。それじゃ、まずあの報道について話してスッキリしておこうかな。べイベー」
 客席はざわめきに包まれる。

 3。
 歌手、姿勢を正すと神妙な顔をして「この間の週刊誌の記事のことだけど……。僕『須磨トキ男』と、アイドルの『亜伊ドル子』は、実は婚約……」
 客席、固唾をのむ。

 2。
 歌手、さわやかな笑顔で手を振りながら「……なんてしてませ〜ん! まったく何にもないよ!! 心配かけたね、ゲッチュー!」
 客席からは安堵のため息に続き、大歓声が沸き上がる。

 1。
 歌手、歓声に応えながら「アハハハハハ! だいたい、僕があんな女とラブラブになるわけないだろ〜? 品はないし、頭はカラッポだし……記事はみんなあの女の妄想さ! ああいうタイプの女は僕には似合わない。僕は、いつまでも君たちのものさ!!」

 0。
「さァ、次は1900年代最後の曲『ラブラブ・アライブ』だ! パッパラパ〜な女の売名行為なんか忘れて盛り上がろうぜェ!!」
 超満員の観客は一勢に立ち上がった。

   *   *

 ある旅行代理店で。
「すいません、主任。飛行機の手配に失敗しました!」
「バカモン! で、どう失敗したんだ?」
「はい。『須磨トキ男カウントダウン・ライブ1999-2000 inハワイ』のお客様と『亜伊ドル子カウントダウン・ライブ1999-2000 inグァム』のお客様が、そっくり入れ違いに……」






評価

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作者からひとこと

 新千年紀を迎える大晦日、多くのミュージシャンがカウントダウン・ライブを行いますね。それはそれでいいんですが、何もわざわざ海外でやる必要はないんじゃないかと思います。未成年のファンを何だと思っているんでしょう?

 小さなロゴが入っただけのグッズを高値で販売しているのも見苦しい限り。「音楽で勝負しろ!」と、声を大にして言いたいです。
 だからといって、ベストアルバム(数曲の新曲を足しただけ&2枚組以上で高価)の乱発も困りもんですが。
 それらを全部買わなければ気が済まないファンよ。目を覚ませ!
 アーティストは、そんなファン達に音楽的充足を与えよ!

(2000/1/18)

初出

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