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必殺! 真空斬り

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必殺! 真空斬り   玉生洋一

「頼んでいたものはできたでござるか?」
「はっ、ご用意できております。これが透明染料でございます」
「これを塗れば、どんなものでも目に見えなくなるのだな」
「左様で」
「ご苦労でござった。金はここに置く。ではもらっていくぞ」
 侍はそう言うと、平賀源内のもとを後にした。

 数日後。侍は大勢の剣客に囲まれていた。
「お主、この人数を相手に勝てると思っているのか。しかも丸腰ではないか」
「ふふ。いいから遠慮せずにかかってこい」
「こしゃくな……!」数人が刀を抜くと同時に斬りかかる。
 侍は慌てることなく右の拳を振り上げた。たちまち、刺客たちの首が宙を飛ぶ。
 全員を斬り捨てると、侍は誇らしげに叫んだ。
「フフフ……見たか! これぞ、必殺真空斬り!!」
 そう。侍は刀に透明染料を塗っていたのだ。
「見えない刀では手も足も出まい」侍はクックッと笑いながら、その場を立ち去りかけた。
「待ちねぇ」侍が声に振り返ると、そこには男が一人。
「なんだ、まだ残っていたのか」
 侍はすかさず身をひるがえすと、男に向かって飛びかかった。
「必殺真空斬り!!」
 だが、透明な刀は文字通り空を斬り、侍は男の剣先にあえなく沈んでしまった。
「クッ……見事だ。き、貴公の名は……?」
「わたくしですかい?」その男は仕込み杖をしまいながら答えた。「へい。按摩をいたしております者で、……皆さんからは座頭の市と呼ばれておりやす」






評価

面白かった→

作者からひとこと

 久々にシンプルなものを。小山ゆうの『あずみ』を読んだらチャンバラが書きたくなりまして……(前の『超極秘任務』の時もそうでしたが)。
 世はスケルトンブーム。あなたならどこを透明にしますか?
(2000/2/11)

初出

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