「恋のジョージおじさん」別オチプロット 「禁断の恋」編
(前略) 夢か現実かはっきりとしないもうろうとした意識の中、綾子はベッドに横たわっていた。 心配そうにのぞき込むジョージおじさんとトムの姿が目に映っては消える。暗転。 目覚めた時、ベッドサイドにはジョージとトムがいた。 「ここは……?」 「気がついたんだね。良かった」 「ジョージ……おじさん!」 綾子はたまらず、おじさんの胸に飛び込んだ。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。 「トムが……、トムがあたしのことを……」 「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」 「おじさんがそんなことを言う必要はないわ。償いをするべきなのはあなたの方よ!」トムをきっと睨み付ける綾子。オロオロとうろたえるトム。 「(再びジョージに向き直って)うふふ……。おじさんはやっぱりやさしいのね。……今はっきりと分かったわ。わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、お願い。わたしと結婚して!」 「……それはできない」 「どうして?」 「それは……私がジョージではないからだよ」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。そこには40代の自分の顔があったのだ。 「驚くのも無理はない。君は20年の間、意識を失っていたんだ。……私はトムだよ。ここにいるのは私の息子だ」 「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」 「ジョージは……親父は死んだよ。数年前にガンでね」 「……!」 二人が出ていった後の病室で一人呻き泣く綾子。 愛する人も20年の歳月もすべてを失って、これからどうやって生きていけばいいのか……。唯一の頼りのトムも別の人と結婚生活を送っているらしい。 綾子はしばらくの間泣き続けていたが、フラフラと立ち上がると病室の窓を開き、ふわりと身を投げた。 それを物陰から見ていたジョージとトム。 「すまない……。許してくれトム」 「なぁに、お互い様じゃないか。これに懲りて、お互い女にはもう手を出さないようにしよう」 「あぁ。やっぱりおれにはお前だけだ」 固く抱き合い熱い口づけを交わすジョージとトム。二人は親子ではなく、同棲中の恋人同士だったのだ。 20年後というのは、綾子を自殺に追いやるためのふたりの芝居だったのである。