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※この作品は『恋のジョージおじさん』の別バージョンです。

*恋のジョージおじさん 「ズバッと解決」編   玉生洋一 [#y3588538]

(前略)

 ふと気がつくと、綾子は病室の白いベッドの上に横たわっていた。
「ここは……?」「気がついたんだね。良かった」
 ジョージおじさん(らしき人物)がやさしく声をかける。
 たまらず、おじさんの胸に飛び込む綾子。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。
「トムが……、トムがあたしのことを……」
「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」
「ううん。おじさんがそんなことを言う必要はないわ。うふふ……。おじさんはやっぱりトムとは違ってやさしいのね。……今はっきりと分かったわ。わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、お願い。わたしと結婚して!」
「……な、なにを言うんだ」
「ダメなの? わたしのことを愛していないって言うの?」
「(絶句した後)……無理もない。目が覚めたばかりで良く理解できていないのだろう。私はジョージじゃない」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 
 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。そこには40代の自分の顔があったのだ。窓の外の風景、カレンダーの日付などから、綾子はそこが20年後だと言うことを悟った。
「私はジョージじゃない。……トムだよ」
「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」
「ジョージは……親父は死んだよ。数年前にガンでね」
「……!」わっと泣き崩れる綾子。愛するジョージはもういない。それどころか、ジョージへの愛はまやかしだったということが、トムとジョージを間違えたことから証明されてしまったのだ。そして失った20年の人生。今更悔やんでも取り返しが付かない。
 トムの指に結婚指輪を見つける綾子。「トムはとうの昔に結婚しているんだわ」見れば側には、トムの息子らしき青年(かつてのトムそっくり)も立っている。
「しばらくひとりになるといい」トムは息子を連れて病室から出ていってしまう。
 孤独感からさらに泣き続ける綾子。泣き疲れた頃、綾子は枕元にアルバムを見つけた。
何気なく開いてみて驚く綾子。
 似合いの夫婦のトムと綾子。どんどん成長していく一人息子。やさしい父親の顔で微笑んでいるジョージおじさん。そこには幸せな家庭の写真がギッシリとつまっていた。
「どうだい? 記憶の整理はついたかい?」ドアからやさしい顔を覗かせるトム。「まったく、戸棚に頭をぶつけて気を失うなんてドジだなぁ!」
「戸棚に頭を? わたしが?」
「なんだ。今朝大掃除してたの、まだ思い出さないのか。まあ、おれがあんなところに戸棚を置いたのが悪かったんだ。ごめんよ」
 綾子は一時的に20年間の記憶を失っていただけだったのだ。20年前、ジョージへの思いが気の迷いだと気づいた綾子は、トムと仲直りし、結婚していたのだった。
「母さん、僕のこと思い出した?」愛すべき息子が部屋へ入ってきて訊く。
 綾子は涙に輝いた笑顔で二人の胸に飛び込んでいった。


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**評価 [#ic60dc7e]

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**作者からひとこと [#e52d6bcd]
 全てを完全に解決するという意味で、ハッピーエンド&SF(すこしふしぎ)のオチとしては一番凝っているのではないかと。
(1999/11/11)

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