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※この作品は『恋のジョージおじさん』の別バージョンです。

*恋のジョージおじさん 「歌い踊る」編   玉生洋一 [#d1235103]

(前略)

●前半部の変更:デートの場所をレストランではなく高級カジノ(ジョ)と競馬場(トム)にする。チマチマと賭けては負け続けるトム。大勝負をしては勝ち続けるジョージ。

 目覚めた時、ベッドサイドにはジョージとトムがいた。
「ここは……?」「気がついたんだね。良かった」「ジョージ……おじさん!」
 綾子はたまらず、おじさんの胸に飛び込んだ。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。
「トムが……、トムがあたしのことを……」
「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」
「おじさんがそんなことを言う必要はないわ。償いをするべきなのはあなたの方よ!」トムをきっと睨み付ける綾子。オロオロとうろたえるトム。
「(再びジョージに向き直って)うふふ……。おじさんはやっぱりトムとは違ってやさしいのね。……今はっきりと分かったわ。わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、お願い。わたしと結婚して!」「……それはできない」「どうして?」
「それは……私がジョージではないからだよ」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 
 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。そこには40代の自分の顔があったのだ。
「驚くのも無理はない。君は20年の間、意識を失っていたんだ。……私はトムだよ。ここにいるのは私の息子だ」
「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」
「ここにおるよ……」ヨボヨボのじいさんが返事をする。数人の看護婦や医者に混ざってずっと側にいたのだが、存在感はなく、気づかなかったのだ。
 それが66才になったジョージだった。中途半端に禿げ上がった頭。すっかり腰も曲がり痩せこけたその姿からは、かつての広い肩幅、厚い胸板を想像することすらできない。
「20年たった今、君の気持ちを再度確認したい。おれとオヤジとどちらを取るんだ?」
 ジョージとトムを見比べて複雑な表情をする綾子。ジョージが手にしている『老人用紙オムツ』を見るまでもなく、ほどなくして綾子はトムの胸に飛び込む。
「やっぱりあなたが好き!」二人は固く抱き合う。ハッピーエンド……と思いきや、トムは喜ぶべき状況にニコリともしない。
 代わりに側にいた息子が躍り上がる。「ヤッホッホゥ! おれの勝ちだ!」
「???」唖然としている綾子に向かって息子は言う。
「おれたちはお前のことで言い争った挙げ句、お前の真の気持ちがどちらにあるかを賭けたのさ。20年後なんて全部ウソ。おれはトム、そこにいるのはうちの爺さんさ」
「じゃぁ……」綾子は抱き合っている相手から飛び退く。「そう。私がジョージだ。お前の気持ちがいかにいい加減かがよく分かったよ……」ジョージは肩を落としてそのまま部屋から出ていく。
「やったぁ! 賭事で初めてオヤジに勝った!」トムも歌い踊りながらその後に続く。
 病室には綾子と垂れ流しの爺さんだけが残る。


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**評価 [#a2dad4e9]

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**作者からひとこと [#bb8f4259]
 男には女よりも大切な物がある……。
(1999/11/11)

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