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※この作品は『恋のジョージおじさん』の別バージョンです。

*恋のジョージおじさん 「身勝手は許さじ」編   玉生洋一 [#w51df968]

(前略)

 ふと気がつくと、綾子は病室の白いベッドの上に横たわっていた。
「ここは……?」「気がついたんだね。良かった」「ジョージ……おじさん!」
 綾子はたまらず、おじさんの胸に飛び込んだ。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。
「トムが……、トムがあたしのことを……」
「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」
「ううん。おじさんがそんなことを言う必要はないわ。うふふ……。おじさんはやっぱりトムとは違ってやさしいのね。……今はっきりと分かったわ。わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、お願い。わたしと結婚して!」
「……それはできない」
「どうして?」
「それは……私がジョージではないからだよ」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 
 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。
「驚くのも無理はない。君は二十年の間、意識を失っていたんだ。……私はトムだよ」
「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」

「ここにおるよ……」ヨボヨボのじいさんが返事をする。数人の看護婦や医者に混ざってずっと側にいたのだが、存在感はなく、気づかなかったのだ。
 それが66才になったジョージだった。中途半端に禿げ上がった頭。すっかり腰も曲がり痩せこけたその姿からは、かつての広い肩幅、厚い胸板を想像することすらできない。
「20年たった今、君の気持ちを再度確認したい。おれとオヤジとどちらを取るんだ?」
 ジョージとトムを見比べて複雑な表情をする綾子。ジョージが手にしている『老人用紙オムツ』を見るまでもなく、ほどなくして綾子はトムの胸に飛び込む。
「やっぱりあなたが好き!」
 二人は固く抱き合う。ハッピーエンド……と思いきや、トムは無下に綾子の体を振り払うと言った。「すまない。おれ、もう結婚してるんだ」
 病室のドアが開いたと思うと、金髪の美女と青年(若いトムそっくり)が入ってくる。
「じゃ、そういうことで」トム一家は仲むつまじく談笑しながら病室を後にする。
 唖然とする綾子。残されたジョージじいさんと目が合う。「ジョージおじさ……」
 綾子が声をかけようとすると、またドアが開き、上品な老婦人が入ってくる。
「じゃ」ジョージはそう一声言うと、お似合いの老婦人と腕を組んで出ていく。
 後に残された綾子と医師、看護婦達の間に、しばらく気まずい空気が流れる。
「じゃ」という声と共に医師と看護婦達が病室から出ていく。
 一人取り残された綾子。しばらく茫然としていたが、すぐに笑いだし、画面に向かって「じゃ」と言うと、その場にぶっ倒れて画面から消える。

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**評価 [#p37038ce]

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**作者からひとこと [#d2b046c5]
 ギャグ編。そんなにムシのいいことは許されないと。紙オムツは某T氏のアイデア。
(1999/11/11)

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