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 *欲深い女王   玉生洋一 [#ycd5b316]
 
  あるところに欲張りな女王がいた。
  女王は金に物をいわせて、あらゆる欲しいものを手に入れたが、そんな女王にも簡単には手に入れられないものがあった。
  それは「若さ」だった。美容手術を施してはいたが、さすがに45才ともなると無理が出てくる。
  そんな女王の前に、ひとりの魔法使いが現れた。魔法使いは懐から茶色の瓶を取り出し、女王に差し出しながら言った。
 「今日は女王様にいいものをお持ちしました」
 「若返りの秘薬ですって!? 安全な薬なんでしょうね」
  女王は薬瓶の中から一粒の錠剤を取りだすと、側にいた番犬にのませた。
  煙と共に犬は、たちまちくたびれた老犬になってしまった。
 「なんじゃこれは!!」
 「最後までお聞き下さい。これは年齢を四捨五入する薬でございます。その犬は何歳でした?」
 「5才です」飼育係が答えた。
 「では、その犬は今10才になったのです。1粒のめば年齢の一の位が四捨五入されるのです。一の位が1〜4の方がのめば若返ります」
  試しに4才だという番犬に薬を飲ませてみると、その犬はたちまち生まれたばかりの小犬へと変身した。
 「おお! 素晴らしい効き目じゃな。ええと、ワラワがのむとすると、今45才だから……50才になってしまうではないか! なんでもっと早く薬を持ってこないのじゃ!!」
 「ご安心を。10粒のめば年齢の十の位が四捨五入されるのです」
 「ええと、ワラワがのむとすると4が繰り下がるから……もう一度、人生をやり直せるわけじゃな! 素晴らしい、ぜひ売ってくれ! いくらじゃ?」
  女王は瓶から無造作に10数粒の錠剤を取り出した。
 「お待ち下さい! のむのはきっかり10錠にして下さい!」
 「少しくらいいいではないか。ケチくさいことを言う男じゃのう」
 「薬が惜しくて言っているのではありません! 11錠のんだ場合、もし体が『1+10』と認識してしまったら……」
  しかし、すでに女王は薬を飲み干していた。
 
  数年後、女王の訃報が国中に流れた。
  女王はある日、100粒の薬を一度にのもうとして窒息死してしまったという。
 「ここ数年姿を見なかったが……。何でそんな無茶なことをしたんだろう?」
  国民は頭をひねるばかりだった。
 
 
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 **評価 [#b00107d8]
 
 面白かった→&vote2(●[546],nonumber,notimestamp);
 面白かった→&vote2(●[547],nonumber,notimestamp);
 
 
 **作者からひとこと [#laf8de3c]
 
  この作品はかなり形にするのに苦労しました。本当はもっと複雑な恋愛話だったのですが、分かりにくかったので結局単純化してしまいました。考えオチなところは変わっていないので、「1+10」をよ〜く考えてみて下さい。
  あなたは繰り上げと繰り下げではどちらが似合う人ですか?
 (1999/6/27)
 
 
 
 **初出 [#h5d5396a]
 
 -「[[ショートショート・メールマガジン]]」第24号(1999年6月5日号)
 -ウェブ公開(1999/6/27)
 
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