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- 恋の診療所 へ行く。
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*恋の診療所 玉生洋一 [#e5b23ec5]
「……診療所をやりませんか?」
突然そう切り出されて、有川重彦は驚いた。
「おいおい。おれは作家であって、医者じゃないんだぞ。なんでまた……」
「ですから、連載をお願いしたいんですよ。タイトルが『恋の診療所』」
早い話が、週刊誌の『恋愛相談』コーナーの依頼だったのだ。読者からの悩みに知識人が答えるというおなじみのあれである。
「とうとう来たか……」重彦はため息をついた。たいていの場合、こういうものは「一度は名が売れたが今はヒマな人物」つまり、落ち目の人間にまわってくるものなのだ。
「おれは創作活動で忙しいんだ。そんなものはよそに頼んでくれ!」
本当はそう言って断りたかったのだが、生活のためには仕事をして稼がなくてはならない。結局重彦はその依頼を引き受けた。
かわいそうなのは、真剣に相談の手紙を送ってくる読者たちである。
「私はある女性と道ならぬ恋に落ちてしまいました。真剣なんです。どうしたらよいでしょう。(37才・男性)」という質問にも、「一度踏み外した道ならどんどん外れなさい。人の前に道はない。あなたの後に道ができるのです」などとテキトウに答える始末。
編集者が「もうちょっと親身になって答えて下さいよ」と懇願しても、重彦は耳を貸さない。
「うるさい。まるで関係のない他人に親身になったりできるものか」
だが、ある日重彦が打ち合わせから帰ってくると、妻の姿が消えていた。
テーブルの上には「道を外れます」とひとことだけ書かれた置き手紙が。
重彦はただ茫然と立ち尽くしていたが、しばらくしてぽつりとひとこと。
「いやいややってきた連載だったが、たまには役に立つこともあるんだな」
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**評価 [#y5ce600e]
[&vote2(面白かった→●[687],nonumber,notimestamp);]
**作者からひとこと [#beda3ff5]
シリーズ初のハッピーエンドでお届けしました。
なのに後味が悪い?
そうでしょうねぇ……。(1999/4/2)
**英語版 [#rff45295]
-LOVESICK COUNSELING
-THE LOVE CLINIC
**初出 [#z4885c34]
「[[ショートショート・メールマガジン]]」第11号(1999年3月2日号)
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