言葉の乱れ・殺人事件
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言葉の乱れ・殺人事件 玉生洋一†
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最近の若者の言葉の乱れは、まったく目に余る。
そのせいで、私のような一介の言語学者まで犯罪捜査の第一線に駆り出さ
れる世の中になってしまった。
捜査本部に着くなり、刑事はテープレコーダーをテーブルの上に置いた。
「まず、これを聴いて下さい」スピーカーからは、容疑者の声が流れてきた。
「ほほう、こいつはまた性根の曲がった声ですな」
「こいつには手を焼いているんですよ。やはり、声だけでも分かりますか」
「そりゃ分かりますよ」何しろ、そいつはこんなしゃべり方をしていたのだ。
「おれはやってないですよ。早い と こ 解放して下さいよ、刑事さん。ヘッヘッヘッ」
一目瞭然とはこのことである。まったく最近の若い者ときたら……。 「2人目の容疑者の声はこれです」
「アタシはやってません。どうしてアタシばっかりこんな 目 に ァ !ン〜アアアァァァワウ。かすでんいなけいゃきなわあ 」 ハ ッ 「ほほう。離婚経験のある女性ですな」 ハ 「ご名答! 隣の家に住む出戻りの娘です」 ロさ。 ッ に訊 シ 色は ハ 「オ っとビ 。ウソ 間 い は 黒 ッ レ ず ー ぁ だ 仲 て レ い ア は も チ さ と ら み オ け 。 その日 にいたの 思うな なよ。 どな 」
「これはサーファーですか。かなりキてますな」
「 俺じ ない ゃな ゃ い じ 俺 俺 じ い ゃ なゃ いな じ俺 」
「これは……ドーナツ屋?」 「ええ。アリバイもないくせに、このセリフを延々と繰り返すだけなのでほ とほと困ってますよ」
「 私じゃな いで しろ?それ す 明 な よ 証 ば一発 ら 。 。 え で 店 そ す ら ○… 長 の で も に 日 ん て 確 も た し認 ず いて とっ しを番店 」
「最後は中古レコード屋の店員です。一応、店番をしていたかどうかは店長 にウラをとってあります。どうです? 彼らの声を聴いて、何か手がかりに なるようなものはありましたか?」 「ふうむ……」私は少しだけ目を閉じると言った。「犯人が分かりましたよ」 「えっ、本当ですか? 一体誰です!?」 「それは……」
※さあ皆さんも考えてみて下さい。正解は、この下に載っています。
※表示がおかしい方(テープレコーダーの声がよく聞き取れない方、ドーナツ屋の声が輪っかに見えない方)は、等幅フォントでご覧下さい。設定がよく分からない方は、全文をコピーして、適当なテキストエディタでお読み下さい。
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【解決編】
「……じらさないで、早く教えて下さいよ」 せかす刑事の言葉に答えて、私はゆっくりと口を開いた。 「犯人は……レコード屋ですよ」 「ええっ。それはまたどうして?」 「刑事さんはレコードがどちら回りに回転するかご存じですか?」 「最近は聴かないですからなぁ。ええと……時計回りですか」 「そうです。そして、時計回りに回転するためには、レコードの溝は左巻き でなければなりません。しかし、レコード屋の店員と称する男の言葉は逆巻 きになっている。本当の店員だったら間違えるはずがありません」 「おお!」 「おそらくレコード屋の主人も共犯なのでしょう。さて……」ゆっくりと席 を立った私は、溜息をつきながら捜査室を出た。 「私の役目も終わりだ。帰るとするか……。しかし、まったく最近の若者の 言葉の乱れときたら……日本の将来を考えただけで気が 沈んで くるよ……」
評価†
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作者からひとこと†
HPに載せるときにもっと容疑者を増やす予定だったのですが、ヒマがなかったのでとりあえず掲載します。他にも何かいい「乱れ」があったら教えて下さい。 (1999/12/15)
初出†
- 「ショートショート・メールマガジン」第45号(1999年11月10日号)
- ウェブ公開(1999/12/15)
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