恋のジョージおじさん/「ズバッと解決」編
#include2(SS/戻り先,,none) ショートショート>恋のショートショート>恋のジョージおじさん ※この作品は『恋のジョージおじさん』の別バージョンです。
恋のジョージおじさん 「ズバッと解決」編 玉生洋一†
(前略)
ふと気がつくと、綾子は病室の白いベッドの上に横たわっていた。 「ここは……?」「気がついたんだね。良かった」 ジョージおじさん(らしき人物)がやさしく声をかける。 たまらず、おじさんの胸に飛び込む綾子。待ち望んでいたぬくもりを感じながら、綾子は泣き続けた。おじさんはやさしく綾子の頭をなでる。 「トムが……、トムがあたしのことを……」 「……許してくれとは言わない。どんな償いでもするよ」 「ううん。おじさんがそんなことを言う必要はないわ。うふふ……。おじさんはやっぱりトムとは違ってやさしいのね。……今はっきりと分かったわ。わたしにはやっぱりあなたしかいない。ジョージおじさん、お願い。わたしと結婚して!」 「……な、なにを言うんだ」 「ダメなの? わたしのことを愛していないって言うの?」 「(絶句した後)……無理もない。目が覚めたばかりで良く理解できていないのだろう。私はジョージじゃない」そう言うと、男は綾子に鏡を手渡した。 それを覗き込んだ綾子はショックのあまり失神しそうになった。そこには40代の自分の顔があったのだ。窓の外の風景、カレンダーの日付などから、綾子はそこが20年後だと言うことを悟った。 「私はジョージじゃない。……トムだよ」 「そんな……! じゃ、ジョージは? ジョージおじさんはどこ?」 「ジョージは……親父は死んだよ。数年前にガンでね」 「……!」わっと泣き崩れる綾子。愛するジョージはもういない。それどころか、ジョージへの愛はまやかしだったということが、トムとジョージを間違えたことから証明されてしまったのだ。そして失った20年の人生。今更悔やんでも取り返しが付かない。 トムの指に結婚指輪を見つける綾子。「トムはとうの昔に結婚しているんだわ」見れば側には、トムの息子らしき青年(かつてのトムそっくり)も立っている。 「しばらくひとりになるといい」トムは息子を連れて病室から出ていってしまう。 孤独感からさらに泣き続ける綾子。泣き疲れた頃、綾子は枕元にアルバムを見つけた。 何気なく開いてみて驚く綾子。 似合いの夫婦のトムと綾子。どんどん成長していく一人息子。やさしい父親の顔で微笑んでいるジョージおじさん。そこには幸せな家庭の写真がギッシリとつまっていた。 「どうだい? 記憶の整理はついたかい?」ドアからやさしい顔を覗かせるトム。「まったく、戸棚に頭をぶつけて気を失うなんてドジだなぁ!」 「戸棚に頭を? わたしが?」 「なんだ。今朝大掃除してたの、まだ思い出さないのか。まあ、おれがあんなところに戸棚を置いたのが悪かったんだ。ごめんよ」 綾子は一時的に20年間の記憶を失っていただけだったのだ。20年前、ジョージへの思いが気の迷いだと気づいた綾子は、トムと仲直りし、結婚していたのだった。 「母さん、僕のこと思い出した?」愛すべき息子が部屋へ入ってきて訊く。 綾子は涙に輝いた笑顔で二人の胸に飛び込んでいった。
評価†
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作者からひとこと†
全てを完全に解決するという意味で、ハッピーエンド&SF(すこしふしぎ)のオチとしては一番凝っているのではないかと。 (1999/11/11)
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