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#include2(SS/戻り先,,none) [[ショートショート]]>恋愛ショートショート *未練ニアム 玉生洋一 [#j2740d21] 「元旦に籍を入れたの。ミレニアムウェディングよ」 彼女にそう言われた時から、僕はただ星を眺めている。 もう、とうの昔にふっきれたつもりだったのに。 何年も前に愛した女。 確かに、彼女に別れを告げられたときはショックだった。 だが、今の僕には心から愛しあうことのできる別の女がいる。 彼女がどんな男と結婚しようが、僕には関係ない。 そのはずだったのだが……。 「だって『始まり』ってカンジがしていいじゃない?」 なぜ元旦に結婚したのかという僕の問いに、彼女は屈託のない笑顔でそう答えた。 「ってカンジ」。昔からの彼女の口癖だった。 ノリだけで生きている女。本来なら僕が最も嫌うべき人種だ。 だが若かった僕は、どんなぬくもりにでも頬を寄せる仔猫のように、フラフラと彼女に引き寄せられていった。 そして、今でもその手の中から逃れられずにいるらしい。 「それに、2000年1月1日って区切りがいいし、覚えやすいってカンジしない? エンギもいいし」 僕の胸はズキンと傷んだ。 かつて、僕も彼女にプロポーズしたことがあったのだ。 僕の懸命なプロポーズに対し、彼女は素っ気なくこう答えた。 「う〜ん、今日って9月9日じゃない? プロポーズをOKする日としてはエンギ悪いってカンジ。せめて10月1日だったらよかったのに」 星が瞬くのと同時に、僕の頬をあたたかいものが伝り落ちた。 悲しかった。何年経っても変わることのない彼女の性格が。 無性に悔しかった。そんな彼女が幸せな結婚をしたということが。 「○×〓秤噸@櫨※鋪¥罷鵬▲!!!!!!」 僕が頭の中で言葉にならない思いを叫んだ時、ちょうど空をひとつの流れ星が横切った。 その流れ星はなかなか消えなかった。 それどころか、たちまち大きくなると僕の家の庭に降り立った。 * * 2000年1月22日。 地球人と異星人のコンタクトが始まった記念すべき日である。 地球は宇宙連邦に参加。僕は初めて宇宙人と接触した地球人として、宇宙省の重要なポストに就くこととなった。 初の記者会見。僕は大勢の記者達の前で、マイクに向かうと口を開いた。 「宇宙連邦の規律に従い、これからは地球の暦も宇宙歴で統一することにします。西暦での今年の元旦は、宇宙歴だと19万9999年19月99日にあたります。もうすぐ十万年紀の『終わり』ってワケです。あははははははははははははははははは」 僕の笑い声は、衛星中継で全世界へと響き渡った。 ~ ~ ~ **評価 [#w95f5154] 面白かった→&vote2(●[742],nonumber,notimestamp); **作者からひとこと [#j5d03a96] 2000年を迎え数多くのSF作品の賞味期限が切れましたが、この話の賞味期限もすでに切れてしまいました……。 千年前の藤原道長もミレニアムなんて知らなかったでしょうし、案外次のミレニアムはすぐに訪れるかもしません。残り数年かもしれない2000年代ですが、皆さんよろしくお願いします。 元旦に籍を入れた皆さん、ごめんなさい! フィクションですよ……。 (2000/3/21) **初出 [#w949f465] -「[[ショートショート・メールマガジン]]」第53号(2000/1/18号) -ウェブ公開(2000/3/21) [[ショートショート]]>恋愛ショートショート