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 *最後の手段   玉生洋一 [#lfa35b31]
 
 「デビューを約束しよう」
  プロデューサーにそう言われた時、私は天にものぼる気持ちだった。
  男女六人でバンドを始めてからちょうど五年。私達の努力がやっと報われたのだ。
  この話を聞いたら他のみんなはどんなに喜ぶだろう。
  ギターのさとし、ベースのシンちゃんが「さっそく曲作りだ!」とはりきる姿が目に浮かぶ。
  女ながらドラムを叩いてきた、い〜ちゃんはもしかしたら泣き出すんじゃないかしら。
  ダンスの美華とみどりは、文字通り舞い上がることだろう。
  私がニヤニヤしながらそんなことを考えていると、プロデューサーが続けて言った。
 「ただし、デビューできるのは君だけだ。うちの会社では女性ボーカルはひとりで売り出す方針だからね」
 
 「キミちゃん。どうだった?」練習スタジオのドアを開けると、待ちかねた様子のみどりが飛んできた。
  他のみんなも練習の手を止め、一斉に期待に満ちた目で私の顔を見る。
 「ええと……、あの、あのね……」
  うまく切り出せないでいる私の言葉をシンちゃんがさえぎった。「分かったよ。みなまで言うな。……駄目だったんだろう?」
 「え〜、ガッカリ!」とたんに美華が落胆の声をあげる。
 「今度こそイケると思ってたのにぃ」い〜ちゃんは今にも泣き出しそうだ。
 「でも、あの……」
 「いやいいんだ。また今度がんばればいいんだから。さあ、気合いを入れて練習だ!」
  さとしのこの一言で、スタジオは再び大音響に包まれた。
 
  結局、みんなには本当のことは言えなかった。
  言えるわけがない。全員駄目だったのならまだしも、私一人だけがデビューするだなんて。ああ、どうしたら……。
  こうなったら最後の手段しかない。私は悩み抜いた挙げ句、意を決してプロデューサーの部屋のドアを叩いた。
 「こんな時間に、どうしたんだい?」
  部屋に上がり込んだ私は、六人でのデビューを精一杯懇願した。プロデューサーは私の一言一言を頷きながら聞いていたが、最後に発した言葉は非情なものだった。
 「何と言われようと駄目だ」
  私はへたへたとその場に倒れ込んだ。
 「可哀想だとは思うが、会社の方針だから仕方がないんだよ」
  私はしばらくの間うなだれていたが、おもむろに立ち上がるとブラウスのボタンに手をかけた。
 「何をするんだ。そんなことをしたって無駄だ!」驚くプロデューサーが止めるのも聞かず、服を脱ぎ続けた私はとうとう全裸になった。
 「どうです? これでも無理ですか?」
 「……」
 
  数ヵ月後、男女三人ずつのバンド『Say-10-Count』はめでたく初登場第1位に輝いた。
 
 
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 **評価 [#rf534710]
 
 面白かった→&vote2(●[956],nonumber,notimestamp);
 面白かった→&vote2(●[957],nonumber,notimestamp);
 
 
 
 **作者からひとこと [#a1f924ae]
 
  オチが分からない方は、バンド名をくり返し唱えれば分かります。日本でも最近認可されたみたいですね。……手術。
  登場人物の名前は『恋の証明写真』の犯人当てクイズにご応募下さったみなさんです。
 (1999/4/2)
 
 **初出 [#obac43fa]
 
 -「[[ショートショート・メールマガジン]]」第12号(1999年3月19日号)
 -ウェブ公開(1999/4/2)
 
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