全海洋蒸発

冥王代

 40億年前に起きたという天体衝突により、地球の水がいったんすべてなくなってしまった(かもしれない)という事実を知ったときは驚いた。なんというスケールの大きさ。この事件の再現映像を見てトラウマになってしまう人もいるが(うちの娘とか)、「同じことが自分たちが生きているうちにまた起こるかもしれない」と思っていれば、戦争や紛争がとてもちっぽけなものに見えてくるといういい効果もあるのではないだろうか。 ※以下のデータや情景描写はNHK『地球大進化』より

衝突した天体に関するデータ

  • 大きさは最大で直径500km(月のクレーターの数から算出)
    • バリンガー隕石孔を作った天体(30〜50メートル)の1万倍。
  • 重さはバリンガー隕石孔天体の1兆倍。
  • 秒速17kmで地球に衝突(20秒で止まってすべてのエネルギーを放出)。

▼今まで地球に衝突した天体の大きさとその回数

200km以上10〜20個
300km以上3〜11個
500km以上0〜6個

 このような全海洋蒸発は1回ではなく、たびたび起こった(可能性は0〜8回)とのこと。月のクレーターの分析によると、40億年前は小天体の衝突数のピークを迎えた頃だという。約44〜40億年前の約4億年間で0〜8回の全海洋蒸発が起こったということだろうか。だとすればこれが最後の全海洋蒸発ということ?  地球には地殻変動があるので、当時のクレーターは残っていないが、地殻変動のない月にはこのときのクレーターが残っている(表面積が広い地球は、月の25倍の衝撃を受けたと考えられている)とのこと。

衝突時の惨状

 地殻津波。厚さ10kmの地殻が津波のようにめくれあがる。水深4kmの海が薄皮のよう。  1辺が1kmの破片が数千キロの高さに舞い上がり、再び地表に隕石となって降り注ぐ。  もし日本列島があったとしたら、ペラペラの紙のようにめくれて粉々になってしまう。  クレーターの淵は高さ7kmの山脈のよう。直径は5000km。  溶岩だらけの地獄絵図。

 衝突時の熱エネルギーで衝突点は4000〜6000度の高温に。  岩石も高温になり、溶けて蒸発。クレーター内に1千億メガトンの岩石蒸気が発生。ドーム上に膨張して熱が全方向に分速300mで拡散。衝突から1日で岩石蒸気は衝突点の反対側に達し、地球は火の玉に。  1年間地球を覆い続ける岩石蒸気。太陽がそこら中にあるのと同じ状態。  海が沸騰。1分間に5cmというスピードで海面が後退(現代のような陸があったらの仮定)。衝突から1か月後。すべての海が完全に消滅。

 これまで見つかった天体衝突クレーターの数は170個あまりあるが、その多くは地殻変動のために崩れたり地下に埋もれたりしているとのこと。最古の痕跡は35億年前の巨大天体衝突時のものだという。40億年前のこの衝突の痕跡は見つかっていないということ? 地層などの研究でこのような衝突が起こったと推測されているということ?

生命はどうなったのか?

 アメリカの核廃棄物処理施設。岩塩の中に核廃棄物を埋め、すこしずつ膨張する岩塩によって核廃棄物は自然と隠れてしまうのだそう。  岩塩の中に縦横無尽に走るトンネルがある地下都市。  2億5000万年前の岩塩の中から完全な微生物を発見。岩塩の中には当時の海水がそのまま保存されている。  そして、微生物は再び動き出し、分裂をはじめた。これは、海がすべて蒸発しても、岩塩の中に入り込んだ微生物は休眠状態で何億年も耐えられることを意味している。  しかし、40億年前の全海洋蒸発では岩塩も蒸発してしまうほどの凄まじさだった。  だが、その熱も地下深くまでは伝わらなかった。地下1000mより下(あまり下過ぎても今度は地熱が高くてまずい)はかなり安全とのこと。地下深くにいた生物が生き残った。  南アフリカの金鉱で見つかる微生物は地上にいない種類のもの。地下では不要な酸素呼吸を行うことからも、はるか昔に地上から地下へと進出したと考えられている。今では地下3000mの微生物が確認されている。おそらくもっと地下にも生物はいる。

衝突後の復活

 衝突から1000年後。ようやく雨が。年間3000ミリの雨量(現在の熱帯雨林程度)。  2000年以上にわたって断続的に降り続いた雨。海が復活。

参考資料

  • NHK「地球大進化」

冥王代

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